2004

泪にさえも戸惑うことなく願いを歌う

ジレッタとはなんだったのか

上を下へのジレッタ大千穐楽から6日。

いまだにジレッタの世界をさまよっている私が超個人的解釈をしてみます。

 

 

ジレッタと結局なんだったのか。

作品の中では、山辺音彦が描き出す空想、妄想がジレッタだとはっきり説明があります。

あ~そうか、空想か。くらいで観ていたときは雰囲気が変わったとこから“つづく”ってでるまでがジレッタだと解釈して、楽しーく横山さんかっこいいなーって鑑賞していました。

3回目に観に行ったとき、パンフレットを買って曲名、歌詞を見て寒気がしたんです。

 

都会の喧騒の音とともに幕が上がって横山さん演じる門前が歌いだす。

その1曲目の曲名が『虚構の共犯者』

幕が開いた後の話はもしかして全て門前プロデュースのジレッタなのでは?

 

虚構の共犯者

星をかき消すネオンサイン

月を挟んだビルディング

永遠なる右肩上がり 膨らみ続けるGNP

一億人に 約束された明るい未来

一億人にもれなく当たる明るい未来

後ろの壁が倒れてくる。横山さんはカラフルなコートを脱ぎ黒スーツに。

ここで横山裕から門前市郎に変わる。

すべてまやかしすべては虚構

「それが何?」とあなたは言う

「上手に騙せ」とあなたは言う

見事 叶えて差し上げましょう

生まれついての大嘘つき

稀代の詐欺師 天才マジシャン

指が鳴ったら 目を開け

望みどおりの 虚構の世界

望みどおりの 虚構の世界

場面がテレビ局に。ヘッドホンを受け取る。

本番!5、4、3…

組織ぐるみの 大嘘つき

飛ばせ 電波で まやかしを

リアルは全部 フレームアウト 

 本番!の部分から物語が始まる。

この曲の最初の部分だけで、横山から門前になり、現実から門前の生きる1960~1980年のいつかの世界になる。

これだけでぞわぞわ止まらない。

のに、しょっぱな「すべてまやかし すべては虚構」とか言われてる。

 

劇中劇に近い構造になっているんじゃないか?

門前の世界の中で門前が作るフィクションが展開される。それを私たちが観ている。私たち観客は門前のフィクションを鑑賞しているテレビの向こうの人役とでもいえばいいのか、とりあえず門前の人生が描かれた演劇を観に来た人役になっている。

門前が描く門前市郎の波乱万丈ストーリーを私たちはみせられてたわけで、もう最初から門前の手の内だったと言うことかと思わずにはいられない。


一幕終わりのハロー・ジレッタ。

「現実を覆う虚構のカーテン」

今ならわかる あれもこれも

きみと出会うためだったんだ

さあ楽しもう

世界中を 俺ときみで騙すんだ

俺ときみでジレッタ

もう一度、念押しするような歌詞になっている。

門前が一幕はこんなストーリーでした。ってまとめているような、改めて説明してるような感じ。

やっぱり私が観ているものは門前がプロデュースしている。

 

 

二幕は『リアルの国からおじゃまします』から始まる。

おじゃまします おじゃまします リアルの国から

おじゃまします おじゃまします 妄想の世界へ

おじゃまします おじゃまします 話題のパビリオン

さよならリアル 時代はフェイクへ

ジレッタ館

ラララ 未来はここから始まる

ジレッタ館

ジレッタ館がオープンし、一般の人たちにもジレッタが提供され始めたシーン。

でも、これを二幕のしょっぱなに持ってきたの凄いと思うんですよ。

だって

おじゃまします おじゃまします リアルの国から

おじゃまします おじゃまします 妄想の世界へ

なんだもん。そう、休憩を経て私たちはまた門前プロデュースのフィクションを観始めるんですよ。

「さよならリアル おじゃまします妄想の世界」

なんですよ。

もう門前さんほんと恐い。(倉持さん凄い)

 

そうやってジレッタを見続ける。

どんどん門前がハマっていき抜けられなくなって最後を迎える。

 

Ave DILETTAはこの門前プロデュースのジレッタという作品を締めくくる歌詞になってる気がしてならない。

Ave DILETTA Ave DILETTA

現実 形而下 喰らう

現実 形而下 喰らう

妄想 わが身を 捧ぐ

妄想 わが血を 捧ぐ

Ave DILETTA Ave DILETTA

実在 形而下 喰らう

妄想 わが霊 捧ぐ

ジレッタという作品をまとめたような内容。妄想にすべてを捧げた男が堕ちていく物語。

 

暗闇のなか“つづく”の看板が降りてくる。ここまでが門前が作ったフィクションなんだと思う。実際“おしまい”ってでるし。俺の作った物語はここでおしまい。

 

そんな中でも、リエとの時間て特殊であそこだけは門前の実際の時間軸なんだと思う。ジレッタという作品に没頭したからこそすれ違った門前のリアル。唯一のリアル。

 

上を下へのジレッタが本当にすごいな、と思うところが最後の『上を下へのジレッタ』

Oh ジレッタ まどろみ 夢見て 目覚めて

Oh ジレッタ さよなら 取り急ぎ お礼まで

Oh ジレッタ まどろみ 夢見て

Oh ジレッタ さよなら 道中 お気をつけて

まどろみで夢を見ていて、目覚めるんです。

門前の人生を追うこの物語は終わりですよ。ちゃんちゃん。

劇中劇を締めてからの劇の締めくくり。

門前の生きる1960~1980年のいつかの世界から現実に、門前から横山に。

入り込んだ順番に出てこられるような構成にしてあるんですよ。

だから何にも違和感を感じず、自然に今の世界に私たちは戻ることができる。

 

 

本当に上を下へのジレッタはおもしろい。

考える余地がごまんとあって、私はこんな風に解釈をしたけど人によっては1つのジレッタだと解釈する人もいるだろうし、すべて現実としてとらえる人もいるんだと思う。

倉持さんはじめスタッフの皆様方、役者の皆様方、みんなみんな素晴らしいからこその上を下へのジレッタ。

本当に上を下へのジレッタはおもしろい、し、私はまだジレッタの世界から帰ってこれない。